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 情事の後で共に湯を浴びた。
 身体を清めるだけのつもりが、注ぎ込んだ熱の処理だと理由をつけて触れた体にまた煽られて湯殿でも抱き合った。
 心地良い疲労感で寝台へと潜り込む。
 張り替えたばかりのシーツの冷たい感触が心地良い。
 抱きしめた腕の中には、漆黒を纏う至高の存在。
 受け入れる方が身体への負担は大きいのだろう。うつらうつらと眠そうにしながらも、まだ起きていたいのか目を擦る姿が可愛らしかった。

「なぁなぁ、コンラッド」
「どうしました?」
「ん〜」
 言いにくいというよりは、言葉を探す様子で視線を彷徨わせる瞳は、澄んだ闇夜の色。
「俺も魔族じゃん?」
「そうですね」
「俺も長寿になるのかなぁ?」
 予想外の問いに面食らいつつ、考える。
 地球産魔族は人間と同じ寿命だとは聞いた。
 けれど、彼は特別であり、地球からこちらの世界へとやってきた魔族には前例がない。
 彼と同じ漆黒を纏う存在を思い浮かべるが、きっとかの大賢者も分からないのではないのだろうか。
 もしかしたら眞王ならば…。
「すみません、俺にはわからないですね。わかるかどうか保証しかねますが、調べましょうか?」
「いや、いいよ」
 地球とこちらでは時間の流れも異なる。
 二つの世界を行き来する彼にとっては、片方の時間に合わせるともう片方に支障が出るかもしれない。
 とても重要なことだと思い至り、気休めの言葉もかけられずに考えると、彼はあっさりと引き下がった。
「不安ですか?」
「ううん」
 腕の中の顔を覗き込むが、否定の言葉通り思い悩む様子はなく。
「ただ、あんたと長く一緒にいられるといいと思っただけ」
 そろそろ眠気も限界なのか、ふわりと笑った後で彼は目を閉じた。
 すぐに聞こえてくる寝息。

 なんて殺し文句。
 思わず口元を覆った。
「ありがとう…ございます…」
 自分が思っている以上に想われている事実を知らされて顔が熱い。
 眠ったばかりの人を起こさぬように気遣いながらも、抱きしめる腕を強める。

 目を閉じたけれど、しばらく眠れそうになかった。


(2009/09/07〜2009/09/13)