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笑顔と活気に包まれた会場の隅の窓をあけ、バルコニーへと一歩踏み出し、空気の冷たさに身体を震わせた。
吐く息が白い。
雪でも降るのかと見上げた空には、冬の澄んだ空気の中で星が綺麗に輝いていた。
まるで彼の瞳のようだと、自然と口許が和らぐ。
「風邪をひきますよ」
「ひく前に、あんたが来てくれると思ったんだ」
自分がいなくなればすぐ探しに来てくれると思っていた。
彼は期待を裏切ったりしない。
ゆっくりと振り向いた先で、予想通りの姿を見つけて手を伸ばした。
すぐに手をとられて、まるでダンスでもするようにどちらともなく引き寄せあう。
「あけましておめでとう、コンラッド」
「あけましておめでとうございます」
さっき広場で皆で交し合った挨拶だというのに、二度目も律儀に返事を返してくれるのは、きっと同じ気持ちだったからなのだろう。
気恥ずかしさではにかんだら、優しい眼差しが降って来た。
続いて、少しずつ近づいてくる銀の星を見つめていられなくて目を伏せる。
大きな手のひらが頬を包み込み、そっと唇に温かな感触が触れた。
一年の最初の特別な日だから、ほんの少しだけでも二人になりたかった。
ちゃんと彼に伝えたかった。
「今年もよろしく」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
もう一度唇を触れ合わせてから、笑いあった。
今年もきっといい年になりそうだ。
(2013/01/01〜2013/05/18)