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「……っくしゅ」
小さなくしゃみとともに、むくりと起き上がったユーリの肩からシーツがずり落ちた。
「ユーリ?」
寒そうに肩を竦めた彼がぼんやりとした表情できょろきょろと何かを探し始めるのを見て、どうしたのかと近づいてみれば、こちらに気づいた彼の表情がゆっくりと変化していった。
「……ッド」
寝癖をあちこちにつけたまま明らかに半分眠っているというのに、確かに名を呼びながら笑みの形を作った唇に視線を奪われる。
「おはよう、ユーリ」
「んー……?」
引き寄せて唇を合わせると、寒いのかシャツを引かれた。
いつものような照れをみせぬかわりに素直に受け入れてくれる彼へのキスが挨拶以上にならぬよう自制して、ようやく唇を離す頃にはすっかり彼の瞼は落ちていた。
「寝ていていいですよ。起きるにはまだ早いから」
昨夜の名残の肌に散る薄紅を指先で一度だけ撫でて、ゆっくりとベッドに横たえた身体はすっかり力が抜けて夢の中。
「おやすみ」
腕の中から聞こえる小さな寝息が、優しいリズムを繰り返す。
一度抱き寄せたぬくもりを手放すのが惜しくて、コンラッドももう一度隣へと潜り込んだ。
(2013/10/29〜2013/11/09)