You are my sunshine
楽しいお茶タイムは、グウェンダルを引きずったアニシナが通りかかったことによりあっけなく終了した。
新しい魔道装置の実験を行うらしい。
見学したいとグレタが申し出て、一緒にと誘われたユーリは遠慮した。触らぬ毒女に祟りなし、だ。
「もう一杯、いかがですか?」
親子の語らいを邪魔せぬよう、給仕に専念していたコンラートがポットを軽く持ち上げた。
「もらおうかな」
「はい」
白いカップが、薄紅色で満たされると同時に良い香りが鼻を擽り、ふぅ、とユーリは一息ついた。
「お疲れですか?」
「生誕祭の準備で何かと騒がしくてさ。祝ってもらうのに文句言っちゃダメだとは思うんだけど、ちょっとなぁ」
今日も新しい衣装の為にと体中のサイズを測られるわ、着せ替え人形にされるわ、なかなかにハードな一日だったのだ。
護衛としてお付き合いをしていたコンラートも、最後には逃げるようにして衣裳部屋を後にしたユーリを思い出して笑みを零す。
「みんな、あなたの誕生日が嬉しいんですよ。あなたは自慢の王ですからね」
「うーん…」
手放しに褒められるとむず痒い。
まだまだみんなに誇れるほどのことが出来ておらず、いつだって助けられてばかりだという自覚をユーリは持っていた。
「そこにいるだけで、みんなが元気になる。そういう存在なんですよ」
ただ、そこにあるだけで糧となる。
ユーリの気持ちに気づいてか、コンラッドは言葉を続けた。
だから、自信を持て、と。
「それは、俺にとってのみんなと同じだな。グレタや、コンラッドや、ヴォルフや、グウェンや…、いつだって一緒にいてくれる。俺一人じゃ、魔王なんてとても務まらない」
かつて国を愛しながらも、非力な自分を自覚したが為に他者に国を委ねた王がいた。
今は同じように非力ながらも、他者に助けられながら持てる限りの力で国を守ろうとする王がいる。
「誕生日って、嬉しいよな。ちょっと大げさかもしれないけど『おめでとう』って言われる度にさ、生まれてきて良かった、って喜んでもらえてる気がするんだ」
だから。
「みんなが祝える国にしたい。生まれてきて良かったと思える国にさ」
「あなたなら出来ます。俺も非力ながら、お力にならせてください」
「ありがと」
いつか彼はその思いを実現するだろう…と、コンラートは思う。
この国だけじゃない。
この世界を照らす太陽となると。
『太陽となりますように』
過去の自分の思いをしっかりと受け継いだ名付け子の成長を目にし、嬉しいようで少し寂しいようで。
彼が理想を実現する未来にも、こうやって共にいられるように、コンラッドはそっと願った。
(2009.07.28)