ダイケンジャーはぴば2011
今年も忙しい両親からは祝いの言葉はもらったけれど、それだけ。もう高校生なんだから要らないと告げた言葉に嘘はない。
ケーキもプレゼントもない、ただ僕がこの地球でまた生まれ変わったというだけのこの日、いつも通りの一日を過ごすはずだったのだけれど。
「渋谷、実は今日、僕の誕生日なんだよね〜」
いつも通り学校帰りに待ち合わせた親友と、駅前のファーストフードの二階席で、なんとなく言ってみたくなったのだ。
「え、嘘? まじで?」
嘘、と口にしながらも疑うことを知らない親友は、数度瞬きしたと思うと、勢い良く立ち上がった。
そして、勢いよく階段を階段を駆け下りていく背中を、僕はただただ見送ることになった。
おめでとう、の言葉ぐらいは期待していたけれど、これはさすがに予想外だ。
そのまま待つこと五分。
飛び出してきた時と同じ勢いで戻ってきた親友は、新たなトレイを僕の前に置いた。
「もっと早く言えよな! 何も用意できてないじゃん」
「忘れていたんだよ」
「なんだよ、それ」
トレイの上にはハンバーガー、チーズバーガー、ポテト、シェイク、アップルパイ、チキン。
さっき僕たちは昼ごはんにセットを食べたばかりなのに、脳筋族はそんなことさえ覚えていないのか。それとも、僕の胃袋も自分と同じサイズだと思っているのか。
「村田」
しばらくトレイの上を見入っていた僕は、正面から呼びかけられて顔を上げた。
「誕生日、おめでとう」
そう言った彼の満面の笑顔に、僕は言葉を失った。
おめでたいと思わなくなったのは、村田健として生まれるもっとずっと前からだ。
十七年前、僕がこの地球でまた生まれ変わったというそれだけの日。
それなのに。
裏表のない彼の、手放しの言葉が、こんなにも染み込んでくるなんて。
「僕は君と違って燃費がいいんだよ。もっと考えなよね」
お礼を言うには、少しだけ僕の性格は捻くれてしまっていて、けれど親友は気にした風もなく笑顔のままで僕に食べるようにと勧めてくるから。
仕方ないなとポーズをとって、僕は2つ目のハンバーガーに噛り付いた。
ダイケンジャー、はぴばー!
(2011.06.06)