ダイケンジャーはぴば2012


「それで、一体どうしたって言うんだい?」
 親友に誘われ、一週間も前から約束していた。
 珍しく何度も念を押され、一体何事かと思いきや……何のことはない、いつものファーストフード店でおしゃべりコースだ。
 話題はもっぱら僕たちの共通の秘密について。
 先日、あろうことか彼は親友である僕を置いて一人であちらの世界へ出かけていってしまった。
 そして今、そんな彼のあちらでの話を一方的に聞かされているわけだ。
「それでね、渋谷」
 いつ終わるとも知れない話に終止符を打つべく、僕は人差し指で眼鏡を押し上げた。もう十分、親友としての役目は果たしたと思う。
「君が僕を置いて、あっちの世界で名付け親と楽しく過ごしてきたのはよくわかったよ。そんな話をするために僕を雨の中呼び出したのかい?」
 何事にもポジティブな彼の話を聞くのは嫌いではないが、自覚のないノロケはごめん被りたい。
 僕を置いてという部分を強調すると、まったく自覚のなかった彼があんぐりと口を開いた。それから急に申し訳なさそうに慌て出す。
 素直なのは彼の美点だ。
「いや、別にわざと置いていったわけじゃなくて」
 そんなことはよく分かってるよ、渋谷。
 それに僕は、どちらかと言えば置いて行かれたことよりも、ノロケの方を反省してもらいたいんだけどね。
「それで、用事はなんだい?
 ゴホン、と一つ咳払い。
 少し前まで思いつめた顔をすることが多かった。そんな表情に比べれば、多少のノロケも許容できる。たとえ、そんな表情をさせていた原因が何であったとしても、だ。
「ああ、そうそう。一緒にあっちにいこうぜ!」
「いまからかい?」
 おあつらえ向きに外は雨。媒介となりそうな水溜りはそこかしこにあるけれど、そんなにうまく……。
「そうだよ。ちゃんと眞王に頼んできたから行けるはず!」
 どういうことなのかと聞く前に手をとられた。
 強引に手を引かれやってきたのは、人通りのまばらな路地。
 屋根から落ちてくる雨粒によってできた大きな水溜りに足を入れた瞬間、足元から地面が消えた。

「誕生日おめでとう!」

 はぐれないように手を握り合ったまま。
 笑いを含んだ声が耳に届いたけれど、水の中に引き込まれた僕は言葉を返すことができなかった。



 僕はまだ知らない。
 彼が僕を置いていった理由を。




眞魔国で陛下の降誕祭のようにダイケンジャー降誕祭が行われていたらいいな!
ダイケンジャー、はぴばー!


(2012.06.06)