パラレル
「どうして俺だったんですか?」
眠るには些か早い時間。
子供は早く寝るものだと寝間着に着替えさせられた。
与えられた自室は、かつてたくさんの子供達と共に自分が寝起きしていた部屋と同じぐらいの広さで、けれど、そこにいるのは自分と、自分を引き取った青年だけだった。
「なんでだろうな」
灯りは枕もとの小さなものが一つだけ。薄暗い部屋の中、炎に合わせて影がゆらりと揺れる。
自分を寝台に押し込んだ犯人である青年は、当然のように傍らに椅子を持ち寄って腰を下ろした。
年齢は分からない。自分のような子供を引き取ったのだからそれなりの年齢なのだろうが、自分と十も離れていないと言われても納得できてしまうような、浮かべられた笑みには無邪気さがあった。
「じゃあ、コンラッドは、どうして引き取られたんだ?」
この漆黒の瞳に見つめられると、ひどく居心地が悪い。視線が答えを求めているのを感じて、思考を巡らした。
どうして彼は自分を選んだのか。
どうして自分は彼を選んだのか。
排他的なこの国で、珍しい外見的特長を持つということは、生きにくいということだ。それは俺自身がよく知っている。そして、彼もそうなのだろう。
「…たぶん、似ていたからです」
言葉の意味をどうとったのだろうか、彼はゆっくりと持ち上げた白い手で俺の目元を覆った。
「さぁ、子供は寝る時間だ」
初めて出会ったあの日、まるで見せ付けるように胸を張り、全身を黒に包んだ姿に目を奪われた。
その清廉さに魅入られたのだ。伸ばされた手を拒めないほどに。
そして今、俺はここにいる。
「おやすみ、コンラッド」
「おやすみなさい、ユーリ」
ひんやりと冷たい手に促されるままに目を閉じると、頬に柔らかな感触が押し付けられた。
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(2010.06.25) /p>