獅子次男3
いつものようにコンラッドを風呂場につれていった俺は、今日こそはと気を付けていたにもかかわらず全身ずぶ濡れになり、結局一緒に風呂にはいることになった。
とは言っても狭い風呂だから俺が湯船の中からコンラッドを洗って、終わったら交代して何故かおれも洗われた。
ライオンだからなのか自分のことには頓着しないコンラッドは、おれが頭にかけてやったタオルをそのままにして髪を拭く気配がない。拭けよと注意しても、ただただ笑うばかりだから、おれは仕方なくコンラッドを座らせた。
「ちゃんと拭かないと風邪ひくぞ」
「ユーリが拭いてくれるんでしょう?」
髪を拭かれながらそんなことを言うコンラッドがあんまりにも嬉しそうで、憎たらしい。だけど、先日…拾った時の哀しげな面影が見当たらないことが嬉しくて、おれは否定するかわりにピクピク動く耳を両手で引っ張った。
「手触りいいな」
水分を丁寧に拭き取った丸い耳の感触を楽しむと、コンラッドが首を竦める。尻尾が揺れて、床の上を踊った。
「くすぐったいですよ」
「ちょっと撫でてるだけだろ」
もう少しだけ…調子に乗ってさらに撫でる両手がコンラッドに捕まり、あっという間に引き寄せられた。
「うわっ」
顔が近い。
歯ではない。柔らかな唇が耳たぶを食まれ、洗いたての髪の匂いと、耳にかかる息に鼓動が跳ねた。
「ね、くすぐったいでしょう?」
味見でもするようにざらりとした舌が耳たぶを舐め、離れていく。
「な、な…」
「ごちそうさま」
まるで食事の後のように満足気に笑うコンラッドは、固まったままのおれの髪を拭き始めた。
(2010.09.10)