服は脱ぐ時より着る時の方が無防備だよねというお話


「コンラッド、おれの着替えどこ」
 僅かな距離さえ我慢できずに、もつれ合うようにキスをしながら服を脱がせあったのは二時間ほど前のことだ。
 最後に脱がされた黒い下着を真っ先に拾い上げたユーリが、次に袖を通したのは、コンラートのシャツだった。
「おおきい」
 ひとまわり違うシャツを羽織ったユーリは、手のひらまで届く袖を見下ろしてぽつりと呟く。僅かに唇が尖ったのは、悔しさからだろう。彼はいつも身長を気にしていたから。そのままでも十分に魅力的だとコンラートは常々思っているのだけれど。
「ズボンどこいった」
 きょろきょろと見回すユーリを助けなかったのは、決して意地悪からではなくて、ただもう少しだけ甘い空気にひたっていたいというささやかな我侭だ。
「なあ、コンラッド。おれのズボン知らない?」
 どこで脱いだのか覚えていないらしいユーリが、ドアの近くに脱ぎ散らかしたままのズボンに気づくのにそう時間はかからなかった。
 ズボンを穿くために腰を折った彼の背中、シャツの裾からまろやかなラインが覗く。ひどく扇情的だが、本人は服を身に着けることに気を取られて、背後のコンラートに気づきもしない。
 なんて無防備なのだろう。
「うわっ」
 ズボンを引き上げながら左右へと揺れる丸みに誘われるまま手のひらで触れると、目の前の体が跳ね上がる。
 無防備すぎるのが悪いのだとかわいらしい恋人に責任を押し付けて、コンラートは逃げようとする身体を腕の中に閉じ込めた。


(2014.11.10)