人魚の涙 - すずしろ苑/聖護院ひじりさま
注意:R18作品になります。
18歳未満および苦手な方は回れ右をお願いします。
OKな方は
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「思うんだけど。あんたがどういう顔をして、こういうのを調達してくるんだろうって」
引き出しの奥の方、つつましやかに仕舞われていたそれを眺めながら、ユーリが背後に問う。
「どうって。普通ですよ、普通。あからさまにニヤニヤしたりは流石にしないですよ」
手早く風呂を済ませてきたコンラートが、さも何でもないように答える。
うん。やめてくれ。あと、彼がどういった店で購入しているのかも気になる所だけど。
間違っても彼が“ウェラー卿”だなんて身元バレするような処で入手していないことを祈りたい。魔王陛下ご愛用アダルトグッズなんてお墨付きを与える気なんて毛頭ないし、そんな風に売られているのを想像するだけで軽く死ねる気がする。
「あなただって嫌いじゃないでしょう? ユーリがどんな風に悦んでくれるんだろうって、期待はしますけど、表には出しません」
確かにこういうのは、わくわく購入する時が一番楽しいのかもしれない。
「ああそう」
あと、いつ使おうか、とそっと引き出しの中に仕舞いこんで機会を伺う間。
いつからこれがここにあったのか。ユーリは気が付かなかった。
寝台の脇の小箪笥には潤滑剤だとか、情を交わす際のあれこれが収められていたが、大抵ここを開けるときは既に部屋は暗くて、奥の方のそれに気付くことはなかった。香油が必要になる頃にはユーリも大概切羽詰まっていて、目に入らなかったということもあるのかもしれないが。
今夜はまだ十分灯りもあって、ユーリも素面だったから気が付いたのだ。
コンラートの部屋に置いてある香油が尽きかけてきて、ユーリの部屋には予備があったので、それをこちら足しておこうと、そういう些細な雑用の折りに発見したのだから。
だが、見つけてしまったそれをこれから試してみるのに、何の差し障りも無い時間でもあった。そもそも、そのための備品補充だ。
「使ってみます?」
コンラートが頭に被ったタオルの下から誘ってくる。
ユーリは恐る恐るそれを奥から取り出した。
白味を帯びた半透明の、ピンポン玉より小さいくらいの球体が五つ、数珠つなぎになっている。片方の端には輪っかがついていた。案外持ち重りするが、石や金属ほどではない。
コンラートのものが入るのだから楽勝だろうと、半ば無意識にそんなことを考え、少し気まずくなって潤滑剤と一緒に枕の横に置いた。
生唾を飲み込もうとして、口の中がカラカラになっているのに気付く。
どうやらとても期待しているらしい自分が恥ずかしくて、誤魔化すように乱暴に上衣を脱ぎ捨てた。コンラートはもともと、鍛えられた腹やら肩やらを見せびらかすように半裸で風呂から上がってきている。
下も脱ごうとして、その前に灯りを、と気付き、だけどいそいそ消して回るのも逸っているみたいで嫌だと、ことさら平然として見せた。ユーリは寝台の淵に腰かけた。そのままばたんと仰向けに転がる。こういう待つ間が一番興奮するよな、と先程の推測を確認しながら目を閉じる。
ユーリが装っていることも、本当はとてもドキドキしていることも、コンラートには全部ばれているだろうけど、わざわざそんなものを用意した甲斐もあるというものだろうと、ユーリは瞼の下で考える。
気配が近づいて、寝台が沈んだ。顔に当たる灯火が陰って目を開ける。手を伸ばして触れた髪はまだ濡れていた。
「ちゃんと拭けよ。あと、灯り」
「のんびり乾かしてなんていられませんね。待ち焦がれてるユーリを前にして」
それでもからかう笑みの奥に確かにぎらつくものをみつけて満足する。
コンラートはユーリの裸の胸をするりと撫でて、思い切るように身体を起こすと大股で部屋を回って蝋燭を消していった。
「それも消せよ」
寝台の側の三本差しの燭台を残そうとするので注意したら。
「これを消すと何も見えなくなりますよ」
「明るすぎ」
妥協で一本を消させて、本は読めなくても相手の表情ははっきり判る暗さに落ち着いた。
起き上がって戻ってきたコンラートを迎える。キスしながら寝台に乗り、互いを素裸に剥いていく。
「興奮してる」
「そりゃあ」
「いつからあれ、隠してたんだ?」
「先月くらいからかな」
それほどの間、ユーリにあれを試すことを想像して楽しんでいたのかと、呆れるやらくすぐったいやら。だけどユーリは五分も待てない。
「早く入れて欲しい?」
耳に息を吹き込むみたいにして問いかけてくるコンラートに、頷く代わりに唇をついばんだ。
犬みたいな体勢を取らされたのは、コンラートの視覚の楽しみのためだ。この態勢で後ろから被さられて突かれるのにはさほど抵抗を覚えないけれど、玩具を挿入しようと覗きこまれるのは全く違う羞恥で、顔に血が昇る。
いつものように指で慣らされて、すっかり覚えた身体はもっと圧倒的なものを求めてひくつく。今日はそれじゃなくて、もっと不道徳なものを入れられるのだとわかっているから、更に胸が痛くなるくらいに興奮する。
丸みを押し付けられて、ひやりと硬い感触に身体が竦む。なのに、あ、と思う間もなく、手早くひとつ目を押し籠められてしまった。
衝撃に入口を引き絞る。体内にある一個がごろりと存在を主張し、連なった外にあるのが菊座を押す。違和感が苦しいのか、もっと奥の方に落ち着かせて貰いたいのか、良く判らないまま髪を打ち振った。
「これくらい、平気でしょう?」
充分に濡らしてあるし、大きさだってそんな無茶なものじゃない。なのに生身では有り得ない無機な質感がユーリの身体を怖気づかせていた。それでも力を込められればぬるりと次の球を呑みこんで、一個分、奥を広げられる。更にもうひとつ。
「ぅあぁ…」
苦しさの中に確かに押し広げられる快感を覚えて、小さく喘いだ。
コンラートの手が、上手く快感を拾えたことを誉めるように背中を撫でる。だけど。
「…もう無理、かも」
何を言っているんですか、とコンラートの声が笑った。
「いつももっと大きなものを上手に飲み込めているのに」
そう言って、とても熱くて滑らかなものをユーリの腿に擦りつけた。
そんなことはユーリにも判っている。けれどどうも勝手が違う。どうも身体が怖気づいてしまうのだ。強張る身体は上手く玩具を受け入れることができない。
「冷たいのが嫌なのかも。硬いのが駄目なのかも」
本当はコンラートじゃないから、だ。
「でも、もう少し」
とコンラートが押し込む。
「頑張ってみましょう」
背中が強張って冷たい汗に濡れる。シーツに立てた指が白く色を失くす。
ああ、と呻いて四つ目も取り込んで。
「あとひとつ」
「む、無理、だ…」
コンラートが後ろに覆いかぶさって、背中にキスをする。
じわじわと最後の球を押し込まれて、腹への圧迫感が強くなる。
「く、…あぁ」
腕ががくがく震えて、奥歯が鳴った。ぎゅっと閉じた瞼の奥がハレーションを起こす。コンラートになら、もっと奥を暴かれたって平気になのに、今は腹の中を喰い破られそうな心地がする。ぐちゅり、と体内の球が動いて息を詰める。
「ほら、入りましたよ」
肩にキスされながら告げられて、ユーリはそうっと腕を折った。突っ張っていた関節が軋む。腰だけを高く突き出すような格好になったが、構っていられなかった。
「おや、そんなに大変でしたか」
意外でしたね、とコンラートがユーリの汗に濡れて張り付く前髪を掬った。
「無理。無理。おれのはモノを受け入れられるようには出来てないの」
コンラートが嬉しそうに目を細めたから、きっと俺専用ですね、とか馬鹿なことを考えているのだろう。ユーリは腹の苦しさを逃がすように、ふう、と息をついた。
「苦しい?」
「うん。いっぱいいっぱい。正直、何が良いのかあんまりわかんない」
せっかく用意して貰ったのに悪いかな、とも思ったけど、次に提案されたって断るだろうしと、素直な感想を伝えてみた。
するとコンラートは、ああ、それはね、と、とても良い顔で。
「ひゃっ」
叫んでしまったのは、五つ目の球の端についていたリングを引っ張られたせいだ。ずるり、と球が引きずり出され、でも半分も出ないところで手を離される。当然再び球体は体内に飲み込まれる。
身体の中を幾つもの球が這いずる感覚をユーリは歯を食いしばって堪えた。生々しい快感に涙が滲む。
行為の後の、抜き去られる時だって、その感覚に背中が震えるのに。もっとあからさまで直截な刺激は、一気にユーリの感覚器官を目覚めさせた。
執拗なまでに焦らして、ゆっくり引っ張られる。じわじわと入口を広げられて、ついにぬらりと吐き出せば、引きずられる残りの球が内壁を擦る。ユーリは零れる声をシーツに吸わせた。
「本当にあなたが卵を産んだみたいだ」
悪趣味な感想と共に、外に飛び出たひとつを指で弾かれて、ユーリは背を跳ねさせた。そこそこ重みのあるそれは、鈍い響きを身体の中に伝えて。人の肉とはまるでちがう感覚に異物感を新たにする。
「じゃあ二つ目」
のコンラートの声に、期待に息を詰める。
次は先程と違って、わざと衝撃を与えるように勢いをつけて。くぷくぷと三つ目も吐き出させられる。
「出てきちゃいましたね。だけどこれでだいぶ楽になったでしょう?」
コンラートが腹を撫でる。確かに楽にはなったけれど、大半を外にぶら下げる格好になって、今度はその重みが揺れるのが堪らない。
なのにわざとそれを揺らしながらコンラートはユーリのペニスを握った。
「触っても無いのにね」
わかってる。見たくもないが、きっとシーツには先走りだって垂れている。
あとは四つ目、五つ目とじんわり引かれて、全て抜き去られた時には、ああ、と寂しげな声が出た。
このうつろを埋めてくれるものを求めて、はしたなく痙攣しているのを自覚する。
だがユーリがねだる前に、いささか乱暴な手がユーリの身体をひっくり返した。腿の裏に掛けられた手で割り開かれて忙しなくコンラートが押し入ってくる。
荒っぽく挿入されたって、ユーリが感じるのは充足だけだ。
コンラートの熱い熱い楔にユーリの内がとろりと溶ける。柔らかくとろとろになったところがコンラートを包み込んで受け入れる。
これまでの緊張に凝り固まった身体をぐずぐずと溶けさせて、その心地よさに恍惚となる。
「きもちいい。すごく、気持ち良い」
そんなユーリを甘やかすように、コンラートはユーリの良いところばかりを擦り上げる。
んー、と切れ切れ声を上げてユーリも腰を揺らし、しがみついたコンラートの首筋を甘噛みする。
「もっと奥まで、奥まで入れて」
コンラートの腰に足を巻き付けて、ぐっと引き寄せた。コンラートの根元の柔らかな果実がひやりとユーリの尻に当たる。
「あぁん…あ…あ…やだ、やだ…まだいきたくない、もっと、コンラッド…もっと」
「で、あれ。どうでした?」
コンラートがユーリに問うのは枕越しの会話。
あれとは言わずと知れた、冷や汗を掻くほどユーリを悦ばせてくれたアレである。
そんなこと聞くまでもないだろうに、わざわざ答えさせようとする。だから。
「うん、凄く良かった。気に入ったからおれの部屋の方に置いといてよ。もうあんた要らないよ。あれがあれば十分十分」
ユーリはもう指一本上げたくない状態だったので、瞼だって閉じたままで答えてやった。
コンラートとでないと楽しめないことは、もちろん判っているけれど絶対、口にしない。
聖護院ひじりさまより頂きました!
【六月の誕生石は真珠だよね】とのことでした。
誕生日プレゼントに「かっこいい次男v」とリクエストをしたら「変態次男」をいただけましたヽ(´▽`)ノ
あれ・・・?(´▽`)
でも、ここまで変態だと、いっそすがすがしいですね。
きっとアイテム探し中の次男も、つかっている最中の次男も、とてもよい顔をしていたと思います。
素敵な誕生日プレゼントありがとうございました!
(2012.08.21)