小ネタ10
「ユーリ」
膝の上に座らせた恋人の耳元で名前を呼んだだけで肩を震わせる姿がたまらなくいとおしい。
「こわい?」
「ん……」
首を横へと振るのは強がりだろうか。
ちょっとした悪戯心で目元に巻いてしまった布の下に隠された黒い瞳は、もしかしたら不安で揺れているかもしれない。
「大丈夫だよ、いつもと何も変わらないから」
我ながらひどい言葉だと分かっていながら、薄紅に色づいた耳のやわらかな肉を食み、彼の体へと指を這わせた。
「ぅ……ぁ…」
普段から敏感な体が、今日は殊更感じやすい。
細い首筋から鎖骨のライン、薄く色付いた胸の頂、浮き出たあばら、どこに触れても彼は小さな吐息を漏らし、縋るように胸元へと擦り寄ってくる。
足の付け根の柔らかな手触りを楽しんでいた手が、閉じた彼の腿の間に挟まれた。触れそうで触れない位置にある中心が、早く触れて欲しそうに存在を主張しているのだけれど、まだ口にできるほどに彼の羞恥心は解け切ってはいないようだ。
「ユーリ、どうして欲しい?」
「ぁ……」
「言ってくれないと分からないよ」
「……って」
自由な手で下腹部を撫でてやっただけで、腿を擦り合わせる彼が搾り出した消えそうな声での懇願に煽られる。
「どうしよう、ユーリ」
「な、に……」
「たまらなくかわいい」
彼の望みなど関係なく、ただ触れたいという自己の欲求のまま触れた中心は既に熱く濡れていた。
「ぁ、あ、あ……っ」
擦り上げるたび、上がる声もたまらなくかわいい。
艶を含んだ甘い響きをもっと聞きたくて、大きく開かせた足の間のさらに奥まった場所に触れると、弾かれたようにユーリが体を反転させた。
「ユーリ?」
「……ぁ」
「嫌だった?」
問いかけに首を振る彼の瞳は見えない。白い布の下の表情が分からないまま見つめれば、伸びてきた両手が首へと絡められた。
「……おれ、ばっか」
「うん?」
「一緒が、いい……」
「うん、一緒にイこうか。もう少し我慢できる?」
不自由な視界の中で探るように唇を合わせてくる彼へとキスを返しながら、たまらなく彼の瞳が見たくなって自ら強いた戒めを解いた。
予想通り涙に濡れた瞳が、予想しなかった熱と欲を孕んでいるのを見せられ、息を呑んだ。
「愛してるよ、ユーリ」
我慢ができないのは自分の方かもしれない。
(2013.08.26)