小ネタ12
並んで座っているだけなのに彼が緊張していると知りながら、引き寄せた。
戸惑いながら膝の上に収まった彼を腕の中へと閉じ込めて、窺おうとした表情は肩口に押し付けられて隠された。
近かった距離が、更に近くなる。
それだけのことではあったけれど、許された気がしてゆっくりと薄いシャツの上から背中をそっと撫で上げた。
「……っ」
「ユーリ」
大きく肩を震わせた彼が、何かを堪えるように息を潜めながら首にすがり付いてくる。その仕草が、たまらなく可愛い。
二度三度と撫でた背は布越しではあったけれど、手のひらに伝わってくる体温がとても熱い。
もっと直接彼を感じたくて、邪魔な布を捲り上げた。
「まっ、て」
膝裏を持ち上げられ、足を大きく開かされた。
衣服はとうの昔に彼の手によってすべて脱がされていて、いまさら隠すもののない身体とはいえ、あまりにも恥ずかしい格好に抗議しようとしたのだが。
「ん、っ……」
高く持ち上げられた足が、彼の肩にかけられた。触れ合った肌が、どちらのものか分からない汗でしっとりと濡れていた。
足の間に割り込んだコンラッドが、おれを真上から見下ろしていた。
「ユーリ」
「ぅ、ぁ……」
散々指でかき混ぜられたそこに、彼が下腹部を押し付けてきた。
脈打つ熱が、これからの行為を伝えてくる。
「あなたに、入りたい」
いつも大人の余裕を見せる彼が、珍しく額に汗を滲ませていた。
薄く開いた唇が、僅かな苦しさを滲ませてながら、深い呼吸を繰り返している。
「っ、ぁ……コン、ラッ……」
ゆっくりと内側を暴かれていく強烈な感覚に侵されながら、おれはただうわ言のように彼の名を呼んだ。
《獅子と飼い主》
うつ伏せにしたユーリの腰を引き寄せた。
揺らした尾の先がふくらはぎに触れる刺激にさえ、彼は小さな吐息を零す。
握り締めたシーツが大きく波打っていた。
「ユーリ」
背中に唇を押し付け、ぺろりと舐めると舌先から汗の味が広がった。
しょっぱいのに、甘い。
「ぁ、あ……」
ぐっと押し入った彼の中はひどく熱く、ざわめいていた。
狭い場所を押し開いていく感覚は、与えているようで、奪っているような、自分の中に眠っている征服欲を呼び起こす。
たまらない。
再び背中に押し付けた唇を軽く噛んだのは、そうしなければ彼の肌を傷つけてしまいそうだったからだ。
彼を愛している。
愛しているのに、時折ひどいことをしたくなる。
「ユー、リ……ッ」
吐息交じりに名を呼ぶと、目の前の美しい背中が粟だった。
振り向いた彼が、真っ黒な瞳を薄い水の膜で滲ませていた。
「コンラッ、ド……っ、ぁ……」
必死に伸ばされる彼の手をとると、絡めた指先へと唇を押し付けた。
不安定な体勢のまま、繋がった腰を揺らせば甘い感覚に酔いしれる。
「ぁ、あ、あ……っ」
ぎりぎりまで引き抜いた熱で、再び押し入りながら狭い内側を擦り上げると、身体を震わせながらユーリが艶やかな髪を揺らした。
「コン……っ、……き」
小さく動いた彼の唇の動きに、目を奪われた。
「ええ、俺も好きです。愛してます……っ」
一番深いところを暴き合うこれは、与え合い、許しあう行為なのだと教えてくれる愛しい彼の名を呼びながら、赤くいろづく唇へと唇を重ねた。
(2013.09.24)