小ネタ13


 抱きしめてキスを繰り返しながら、ゆっくりと一枚ずつ衣服を剥ぎ取った。
 ようやくベッドへと倒した身体へと覆い被されば、見下ろす先の彼が焦ったように背を浮かせた。
「ま、待って」
 目元に溜まる水分が、いまにも零れ落ちそうだ。
「待ちません」
 正しくは、待てない、だが。
「だって」
 頬を朱に染めたユーリが、でも、だって、と言葉を紡ぐ。
 散々に触れていつもより艶を帯びた唇へと親指の腹で触れ、輪郭をなぞった。
「怖い?」
「ちがう」
 何度も同じ問いかけをした。その度に、彼がくれる返事も同じ。
「では、嫌?」
「……イヤ、じゃない」
 逡巡するように視線をめぐらせた後、相変わらず赤い顔の彼は秘密を告白するように小さく唇を動かした。
「……恥ずかしいんだ」
「ユーリ……」
 怖いならば待てる。嫌ならば、無理強いなど出来るはずがない。
 だが、そうではないならば。
 止めるどころか煽る選択をしてしまったことに気づかない可愛い恋人の手へと己の手を重ねて、その背をベッドへと縫いとめた。


「ん、んっ、ぁ……」
 大きく開かせた足の間に陣取り、手の中で震える熱へと舌を這わせた。
 先端から溢れる雫と唾液を絡めながら舐めあげる。水音が耳に届いた彼が、頭を大きく振って艶やかな黒髪を揺らした。
「も、や……っ」
 離してと声にならない声が続く。
「どうして? 気持ちよくない?」
 逆だと知っていながら、気づかぬふりで追い詰める。
 閉じぬようにと支えた大腿も、耳に届く母音ばかりの嬌声も、もう限界だと訴えていた。
「ゃ、はなし、て……っ、ぁ、あ……」
 今にも爆発しそうな熱を深くまで飲み込んだのは、何一つ余すことなく彼のすべてが欲しいから。
 吐き出すまいと必死の我慢など不要だということ、追い詰められるほどに俺を煽ることに彼はまったく気づかない。
「ぁ、あ、ああ−−ッ!」
 肌蹴たシャツの胸元を強く握り締めながら、一際甘く啼いた彼が放った熱を口腔で受け止めた。
 二度三度と身体を震わせた彼がゆっくりと全身を弛緩させていく様を見つめながら、放たれたものを嚥下する。
「っ……飲むなよ、ばか」
 咎めているつもりなのだろうが、まったくの逆効果だ。
 唇の端から溢れた雫を、見せ付けるように舐め取った。


(2013.10.28)