小ネタ16
「……ん、ぁ……」
繋がったままゆるく腰をまわされて、シーツの上の背中が跳ねた。
意図せずに締め付けてしまったそこが、リアルに今の状況を伝えてくるのが恥ずかしい。
じんじんと繋がったソコが熱い。どちらかの僅かな身じろぎにさえも、体中に伝播していくほどに神経が研ぎ澄まされていた。
「きもちいい?」
強くシーツを握る手に、大きな手が重なった。いつもより高い体温の手のひらが、ほんの少し汗ばんでいた。
「……ぁ」
言わなくてもわかるだろ。
だから聞くなと言いたかった言葉が音になる前に消えた。
ゆっくりと腰を引いたからコンラッドがずるりと抜け出ていく感覚に、背中がぞくぞくする。喪失感に勝手に体が反応して、引きとめてしまったら彼が微かに吐息を漏らした。
「おしえて、ユーリ」
そんなこと、聞かないで欲しい。
きもちいい。
いつだって甘くて、おぼれて自分を見失ってしまうぐらいにきもちいい。
持ち上げた大腿でたくましい腰を挟んで引き寄せた。じん……と、また甘さが広がる。彼の引き締まった腹筋に、すっかり勃ちあがったそこを押し付けた。
「……いい、よ。あんた、は…っ?」
おれのことばかり気にするけれど、そういうあんたはどうなのか。
ちゃんと一緒にきもちよくなって。おればかりじゃなく。
「……ユーリ」
手の甲に感じていたぬくもりが消えたと同時に、額が触れ合った。
「ぁ、ぁ、あ……っ」
まいったな、と口の中でひとりごちた彼の言葉の意味を考えることができなかったのは、すぐに激しい抽挿が始まったから。
きもちいい、と教えてもらえたのは、嵐のような時間が去った後のことだった。
「泣かないで」
見上げてくる瞳は今にも溢れだしそうなほど水分を湛えていた。
「誰、の……せい、でっ」
整わぬ息のまま強がってみせる姿が、とても可愛い。
「俺ですね」
太陽みたいに笑う元気な少年からは想像ができない今の彼を知るのは俺だけなのだと自覚すればこそ、自然と口元が緩んだ。
「ばっか……、んっ」
散々に触れ合って、いつもより艶を増した唇をまた塞ぐ。
好きだよ、とキスの合間に何度も囁いて、舌先をしのばせると苦しそうに彼が喘いだ。
「ユーリ」
どうしようもなく彼に溺れていると自覚する瞬間というものがある。
例えば、こうして彼を追い詰めて、泣かせることに喜びを感じてしまう時。
苦しいと知っていながら口腔内を余すことなく舌先で擽った。彼が一番弱い上あごの裏は念入りに。逃げようとする彼の舌を時折擽って、溢れる唾液を絡めあう。
「……っふ、……ぁ」
薄く目を開いて見つめた先では、強く閉じた目元から雫が零れ落ちるのが見て取れた。
背中にまわされた手のシャツを掴む指の強さも、漏れる吐息も、汗で張り付いた前髪も、シーツを蹴るつま先も。
すべてがいとおしい。
「好きだよ」
何度目かの囁きに、彼が消え入りそうな声で「おれも」と返してくれるから。
彼が想像しているような大人になりきれずに、尚も彼を泣かせてしまうのだ。
(2013.11.10)