小ネタ18
「そう、いいよ」
不安そうな視線には気付かぬふりをして、殊更やさしく笑いかけた。
俺を跨ぐ格好のまま、眉根を寄せながら頬を上気させる様子がとても悩ましい。
「そのまま腰を落として。できる?」
「ぁ……」
支えていた手を離すと、不安定な体勢のユーリは俺の腹についた両手に力を込めた。
震える大腿を撫でながら、励ます。
上目遣いの彼はかわいらしいけれど、今日は聞いてあげるつもりはなかった。
「お願い、ユーリ」
「……ん」
このままでは埒があかないと悟ったのだろう、僅かに腰が落とされた。
たっぷりと時間をかけて解した場所に切っ先が触れる。息を詰めたのは二人同時か。
「力を抜いて。ね?」
「う、ぁ、あ……」
言葉だけは優しいが、痛いぐらいに張り詰めたそこはユーリの中に入りたくて限界を訴えていた。
きゅっと目を閉じて覚悟を決めた彼が、更に腰を落としていく。
狭い場所を抉じ開けていく感覚にくらくらした。
「ぁ、だ、めっ」
先端を呑み込んだところで、再び浮きかけた腰を掴んだ。
「−−っ!」
衝動のままに引きおろすと声にならない悲鳴が上がる。
大きく背を撓らせた彼が後ろに倒れぬように引き寄せて強く抱きしめれば、互いの腹を熱い飛沫が白く汚した。
「っ、はぁ……はぁ……」
「気持ちよかった?」
返事を聞く前に、下から突き上げたのは、返事を求めていなかったわけではなく、返事を聞いている余裕もなかったから。
「まって、あ、あっ」
「ごめんね」
それだけを口にして、唇を塞ぐ。
どうやっても、待ってあげられそうになかった。
雨のように降り注ぐ湯で煙る浴室の中、立っていられない身体を壁にもたれかからせた。
まだふわふわしている。
「ユーリ、大丈夫ですか?」
「ん」
汚れてべたべたする身体にお湯がかかる。
肩から順に少しずつ下がっていくシャワーヘッドが下腹部に辿り着いたところで、身をよじった。
「やっ」
洗うためだと分かっているはずなのに勢いの強い湯は刺激にしかならない。
けれど、逃げるようにして背を向けたことを後悔するのにさほど時間はかからなかった。
「逃げたら洗えないよ、ユーリ」
背後から伸びた手が腹のまわされた。支えるためなのか、逃さないためなのかわからない。
ただ、動くこともできないまま再び押し当てられた湯の刺激に、おれは強く目を閉じて頭を振った。
「ぁ、あ、や……っ」
気持ちがよくて、ただでさえふわふわしている身体から力が抜けそうになる。
肌に当たる水滴に混じり、さっきコンラッドが放ったものが流れ落ちていくのを感じて内股に力を入れた。
「中に出してしまったものを掻きださないと」
「あ、やだっ」
シャワーヘッドを壁に固定したコンラッドが、そこに触れた。
さっきまで散々に擦られたそこはいまだ柔らかく熱を持っていて、おれの意思に関係なく添えられた指を呑み込もうと動き出す。
「はっ……ぁ、んっ……」
入り込んできた指が狭い場所を押し開き、内側を擦る。
どうしよう。
きもちいい。いやだ。きもちいい。はずかしい。
「も、い……からっ」
さっきとは、状況が違う。
コンラッドは冷静に、処理をしてくれようとしているだけなのに。でも、おれは。
「ぁ、あ、あっ」
ぎゅっと力を入れると、内側にある指の動きがさらによくわかった。
後ろにいるコンラッドには見えていないだろうけれど、きっとおれがいまどんな状況なのかきっとバレているだろう。
「いっていいよ、ユーリ」
見透かすように耳元で囁かれた。
恥ずかしさと気持ちよさで、目許に涙が浮かぶ。
「っ、ぁああああっ!」
掻きだすはずだった指先が、いつしか気持ちいい場所ばかりを行き来するようになっていて、おれは我慢できずに浴室の壁を汚していた。
(2013.12.31)