小ネタ20
「苦しくない?」
問いかけに答えようとして、自分がずっと息を詰めていたことに気付いた。
「……んっ」
じんじんと、繋がったところが熱く脈打ってる。
ぎゅっととじていた目をあけると、涙で滲んだ視界の中にうつるのは、ちょっと心配そうな顔。
大丈夫だと言いたいけれど荒い呼吸を繰り返すのがやっとで、ゆっくりと首を左右に振った。
「ぁ……」
大きな手が、髪からこめかみ、頬にかけてを流れるように何度も撫でていく。
相変わらず全身が心臓みたいにドキドキしっぱなしで、僅かな身じろぎにさえ身体が跳ねそうになる中だったけれど、労わる動きは心ごと身体の強張りを少しだけ和らげてくれるから、おれはようやく呼吸のリズムを思い出した。
「は……ぁ、っ」
あつくて、くるしくて、普段とは違う自分をさらけ出すことが少しだけ恥ずかしくて。
けれど、うれしくい。
そして、そう感じる自分がまた恥ずかしくて。
「コン、ラッド……」
嵐のように駆け巡る感情のすべてが、彼を好きだと告げていた。
好きだと、唇を動かして伝えたら手が捕まった。いつもよりも強い力で絡まった指が、おれの手の甲をシーツへと縫いとめる。
「大丈夫?」
尋ねてくる声が、掠れていた。
いつもの丁寧な口調がなりを潜めて、熱を孕んだ声に問われてぞくりと肌があわ立つ。
普段は涼しげな彼が、呼吸を乱して、額から汗を滴らせる姿に胸が苦しくなった。
「へい、き……」
今まで、知らなかったかお。
おれだけのコンラッド。
「ぁ……あ……」
握られていた指を強く握り返した。
同じぐらい熱っぽい視線を絡めあえば、もう言葉はいらなかった。
背後から覆いかぶさるようにして、腰を押し進めた。
指でほぐしている最中から、狭いそこは熱く脈打っていて、ここで繋がるのだと想像するだけで身体を熱くしたけれど、実際に繋がった時の感覚は想像とは比べ物にならない。
「ユーリ」
掠れがちな声で名を呼べば、シーツに頬を押し付けて衝撃をやり過ごそうとしていた恋人が、ゆっくりとこちらを振り向いた。
目元に涙をいっぱいに溜めて、艶やかに色づいた唇を震わせる様が、たまらなくかわいい。
「んっ……」
キスをしたくて、彼の肘をとって引き寄せた。身体が近づいた分だけ深くなった繋がりが、彼の唇を喘がせる。
「苦しくない?」
「な、い……でも」
キスの合間に尋ねれば、彼は何かを言いかけて躊躇った。
だから吐息が触れ合う距離で続きを待ったのだが。
「……ぴったり、で、あついなって」
返ってきたの予想外の言葉に、つい目を瞠った。
無自覚に、かわいく煽ってくれるのだから、たまらない。
言った本人も恥ずかしくなったのだろう、シーツへと再び頬を押し付けるから追いかけるように彼の背へと胸を重ねた。
「うん、熱いね」
赤くなった柔らかな耳たぶを唇で食みながら、僅かに引いた腰を再び奥へと押し付ける。
「すごく、気持ちいい」
「ゃ、や、だ、ぁ……」
ゆっくりとした抽挿を繰り返すと、腰を引くたびに生まれる隙間を嫌がるように吸い付き戦慄く彼の中の様子がよく分かる。
彼自身も自覚があるのか、すっかり隠されてしまった顔が見たくて、彼の腹へと手を差し入れた。
「やっ……ぁああっ」
後ろへと引き上げ、膝の上に抱き上げる。
悲鳴にも似た甘い声さえ可愛くて、背後から抱きしめた恋人を強引に振り向かせて唇を重ねた。
(2014.02.01)