小ネタ25


「かわいいね」
 常々思っていても口に出さぬ言葉を、コンラートは笑み混じりに囁いた。
 それは、間近の距離で吐息を零すユーリの耳に届いているかどうか。
 頬を撫でる手のひらに懐くようにゆるく首を傾けた彼は、薄く水の膜の張った瞳をコンラートへと向けて、薄く開いた唇を小さく舐めた。
「ん……ぁ……」
 いつもより鮮やかに色づいた唇に誘われて、再びキスを繰り返す。
 シーツの上で乱れる黒髪も、わずかに滲む涙も、吐息にまじってあがる声もいとおしい。
 すらりと伸びた太ももの内側に手を差し入れておおきく開かせて、その間に身体をいれると、曲がった膝がコンラートを抱き込んできた。
 意識は二人の間で絡みあう舌に向いているから、無意識だったのだろう。そんな仕草に、ふっと笑みが零れた。
「かわいいね」
 彼の心と身体を高めるためだったはずなのに、いつの間にか自分の興奮まで高まっている。。
 もう一度ささやく言葉とは裏腹に余裕のない自身を自覚しながら、コンラートは細い腰を撫でてから臀部を持ち上げた。


 後ろから細い腰を引き寄せて、汗の滲む背中へとぴたりと胸を寄り添わせた。
 やわらかな二つの丸みに押し付けた熱はすっかり昂っていて、すぐにでも彼が欲しいと訴えている。
「ユーリ……」
 クッションに顔をうずめた恋人の、朱にそまった耳朶を唇で食んだ。
 返されるのは、くぐもりながらも甘く零れる声だ。
「やっ……」
 繋がりながらそうするように、やわらかな丸みの狭間でゆっくりと腰を揺せば、むずがるように彼の腰が揺れた。
「しても、いい?」
 かわいい恋人を前にして、いまさら止めることなどできないけれど。
 答えるみたいに、また彼の腰が揺れる。誘うように、左右へと。
「たまらないな」
「ん、ぁ……」
 強張った肩に口付けを落としてから、小さな丸みを割り開いた。
「ぁ…あ、あ……っ」
 強く締め付けながら震える彼の内側を、ゆっくりと押し開いていく。
 悲鳴じみた声はどこか甘さを含んで、麻薬のように頭をくらくらさせた。
 額に滲んだ汗が、ぽつりぽつりと零れ落ちる。
「たまらない」
 漏らした声が、掠れて消えた。


「……っ!」
 濡れた内へと受け入れる衝撃は一度目ほどではなかったとはいえ、ユーリの体を強張らせるには十分だった。
 開いた唇から悲鳴が零れなかったのは、重ねられたコンラートの唇に飲み込まれたから。
「ん……、んっ…ぁ…」
 深いところまで受け入れた熱が、放たれたばかりの白濁を掻き混ぜる。
 繋がった下腹からか、深く絡ませた舌からか。
 絶えず響くいやらしい水音を恥ずかしいと感じる余裕さえなく、ユーリはただ体を震わせ、目元を濡らした。
「あ……あ……っ」
 大きく揺さぶる動きに翻弄されながら、逞しい腰を大腿でぎゅっと挟む。
 腹の中があつい。
 腹だけじゃない、身体中どこもかしこも、あつい。
「あ……ああっ……」
 意識が融けそうだった。
 きもちいい。
 こわいぐらいだ。
「コ、ン……ド……」
 どうにかなってしまいそうで、たすけてほしくて。
 知らぬうちに、しがみついた背中へとユーリは強く爪をたてていた。


(2014.06.09)