小ネタ30
ベッドへと横たえさせた身体を見下ろすと、自然と口元が綻んだ。
我ながらしまりがない顔をしている自覚はあるのだけれど、幸いにもかわいらしい恋人は「やらしい顔してる」と評してくれた。
「ユーリがかわいいからね」
開かせた足の間を陣取って膝を立てさせれば、この後の行為を見越してか堪えるようにユーリの指先がシーツを握った。
「なに言って、ぁ……」
膝裏に手をかけて、細くしなやかな脚を持ち上げる。腰を浮き上がらせる不安定な体勢のまま、弾力のあるふくらはぎを食むとつま先が空中できゅっと丸まった。
「や、だ」
ふくらはぎから膝裏、そして太ももへ。唇が触れる度に、小さく吐息を漏らして身体を震わせる彼は、とてもいとおしく感じると同時にほんの少しだけ嗜虐心を煽ってくれる。
焦れたように揺れる腰を撫でつけながら、ゆっくりと時間をかけて脚の付け根までを唇で堪能した。
コンラッドの膝をまたぐと、膝立ちになって首へと両腕を絡めた。
頭一つ分の身長差はどうしたって埋めがたくて、普段は見上げるばかりになる彼を、こうして見下ろせるのが少し嬉しい。
額を触れ合わせると、不思議な虹彩が自分の影に覆われるのを見て、ユーリはいつもの逆だなと、笑みを零した。
「ユーリ」
キスをする時に上向くのはいつも自分だ。距離が近いほど、どうしたって彼の顔を見るためには真上を向かなければならなくなる。
それもいつもと逆となり、顎を上向けるコンラッドが求めるものを察して、ユーリはいつもされるように彼の唇を啄ばんだ。
「や、っ」
心臓の腕を這っていた指先に、きゅっと突起を摘まれて、ユーリは背を撓らせた。
すっかりボタンを外されてしまったシャツは、羽織っているものの肌を隠すことはない。
「イヤ?」
つい、とっさに出てしまった言葉を聞きとめた恋人が、首筋に埋めていた顔を上げた。
「えっと……」
じぃ、と至近距離からこちらへと向けられた瞳に見えるのは期待だ。
だから、ユーリは答えずに、ふい、と視線を逸らした。
「言ってくれないと分からないよ、ユーリ」
絶対に嘘だ。
返事をねだる声に、ユーリは口を噤んだ。
指先は相変わらず胸の上。先ほど指で弄られたそこは、もう触れられているだけでは満足できなくて更なる刺激を求めてぷっくりと膨らんでいる。
「こうされるの、イヤ?」
「……ん」
かり、と指の腹で引っかかれて、吐息が漏れた。
「しってる、くせに」
もぞ、とユーリの腰が揺れる。
黒い下着を内側から押し上げる熱がもどかしくて、シーツを蹴るとコンラッドが喉の奥で笑った。
普段は優しすぎるほどの恋人は、時々こうしてベッドの上でいじわるになる。
素直になるまで欲しいものが与えられないことは、経験上知っている。
「イヤじゃないから、さわ、って」
だからユーリは顔に熱が集まるのを感じながら、小さな声でお願いをした。
(2015.01.21)