小ネタ32


 おれがやりたいことには基本的になんでも賛成してくれる彼が、今回ばかりは渋い反応をみせたけれど強引に押し切った。
「無理をしなくていいんですよ」
 そこを見つめたまま動かないおれへと、頭上から心配そうに降ってくる声は恋人というよりも心配性な保護者と言ったところだろうか。
 それが、逆におれの決心を強めていることに彼は気づかない。
「別に、無理してない」
「ですが……」
「黙って」
 なおも彼が重ねようとする言葉を振り切るように、そっと顔を埋めた先は彼の脚の間だ。
 寛げたズボンの前から覗く薄い布に唇を寄せると、目の前の腹筋がぴくりと動いた。
「おれだって、あんたを気持ちよくしたいの」
「ユー、リ」
 触れられたいという衝動と同じように、触れたいとも思うのだ。同じ男として、やっぱり一方的に与えられるのはくやしい。
 そう、くやしいのだ。だってそうだろう、いつまでたっても彼はおれのことばかりを優先してばかりだ。
「ん……」
 布の上からぺろりと舐める。舌に乗せた唾液を吸い取った薄い布が色を変えるのを見て、おれは繰り返し舌を押し付けた。
 ぴくり、ぴくりと腹筋が動いて、薄い布が下から押し上げられていく。返される反応が嬉しくて直接触れたいと願えば、下着の淵にかけた手を押し留められてしまった。
「手、どけて」
 上目遣いに見上げた先の彼の眉間に珍しく刻まれた皺がちょっと色っぽい。
「コンラッド」
 したいと言ったのはおれなのに、いまだ彼は躊躇いをみせている。
 決心がつかない彼の手を強引にどけると、ようやく観念したのか少し腰を浮かせて脱がせやすいように協力をしてくれた。
「……おおきい」
 はじめてみるわけではないし、身をもってその大きさを実感してはいたけれど。
「だから無理にとは」
「無理じゃないって。おれがしたいの」
 もう何度目か分からないやりとりの末に、そっと手で触れてみた。手の中で脈打つまだ柔らかさの残るそれを両手で包みこむ。
 開かれた太腿が緊張したのを感じて、何故だかおれの方まで背筋が震えた。
「きもちいい?」
 上下に擦ったそこが手の中で膨らんだのが分かる。無心で繰り返すと、大きな手が頭に触れた。
 促すつもりなんてなかったのだろうけれど、優しく髪をなでる手に励まされて、僅かに体液を滲ませる先端に唇で触れてみる。
「……ん、んっ」
 繰り返しキスをして、舌先でくすぐって。どんどん反応を見せるそこを、気づけば夢中になって舐めていた。


(2015.03.14)