小ネタ34


「かわいい」
 目を細めた囁きに、ユーリの顔がどっと赤くなった。
 普段ならば男として受け入れがたい形容詞も、低い声で甘く囁かれてしまうと腰に響く。
「……ぁ」
 何も言い返せないユーリの唇を啄ばみながら、コンラッドはプレゼントを解くみたいに丁寧にバスローブの紐を解いた。
 触れられる前からうるさかった心臓が大きな手のひらの早鐘を打つ。
 少年らしくやわらかさを残した肌の感触を楽しむように揉みこまれたかと思えば、硬い指先でこりこりと先端をくすぐってみせる。
「んっ……」
 その度にユーリの肩が震えているのにコンラッドが気づかないはずもなく、「かわいい」と何度目かわからない呟きを漏らしながら、やわらかな肌へと口付けを落とした。



 大きく開かされた足は恥ずかしいのに、その間に陣取ったコンラッドの身体が閉じることを許さない。
「あっ、あっ、ぁ……」
 高ぶった性器を躊躇うことなく口に含まれて、ビクンと腰が跳ねた。
 深くまで呑み込まれたままねっとりと舐める動きに、唇から漏れる声を止められない。
「ああ……んっ……」
 いつもは穏やかで優しい恋人が、時折見せる別の顔。
 こういう時のコンラッドは決して乱暴ではないけれど少しだけ強引だ。
 大きな手が腰を撫でたと思ったら、背後にまわって後ろの丸みをもみしだく。
「ぁ、あ……」
 ユーリが零した体液と、コンラッドの唾液と。混ざり合ったそれを纏った指先が円を描くように小さなそこをくすぐった。
 無意識に強張った身体の反応を伺いながら、つぷりと入り込んだ指先が浅い場所を撫でていく。
 その間も唇での愛撫は続くものだから、ユーリはたまらないと頭を振った。


 もう許して、と涙を零したユーリの顔を見て、コンラッドは嬉しそうに微笑んだ。
「ひど、い……」
 一本の指さえきつく締め付けていたそこは、今では三本の指を含んみながらひくりひくりと震えている。内側のやわらかな粘膜を指先で押されるたびにユーリの身体は小さく震えて、潤んだ瞳から涙が零れた。
「も、やだ……」
 きもちいい。けれど、もどかしい。
 一番きもちいい場所を避けてばかりのコンラッドのせいで、発散できない熱が燻ったままだ。
 そのくせたまらず足の間へと伸ばしかけたユーリの手を制して、触っちゃだめとひどいことを言う。
「ごめんね」
 いよいよ涙が止まらなくなったユーリの目元に、やさしく唇が押し付けられた。
 謝りながらも、やっぱり嬉しそうに笑っているものだから「ひどい」と非難する声が漏れる。
「もう、いじわるしないから」
 ユーリの内から指が抜け出ていくと同時に、抱えられた膝裏を押された。膝が胸につきそうな体勢は苦しいけれど、文句を言おうとした唇から漏れたのは嬌声だけだった。
「ぁ、あ、あ……」
 ぐっと押し入ってくる熱量に、くらくらする。
 熱い粘膜が触れ合うのが、たまらなく気持ちいい。
「きもちよかった?」
 おなかの中の一番深いところまで押し入ったところでようやく腰を止めたコンラッドに頬を撫でられて、息を乱したユーリはようやく自分が達してしまったことに気づいた。


(2015.03.14)