小ネタ37


「あ、あ……っ、ぁ」
「……っ」
 濡れて熱くなったナカに包まれる感触に、コンラッドは息を詰め奥歯を食いしばった。
 もっていかれてしまいそうだ。
 眉根を寄せながら、少しずつ下ろされる恋人の腰を支えてやる。そのまま強引に引き寄せてしまいたい衝動をどうにか理性で押さえ込み、柔らかな丸みが下肢に触れるのを待ってようやく息を吐き出した。
 できる?と聞いたのはコンラッドだが、彼が本当にしてくれるなんて思いもしなかった。
「くるしい?」
 無理をさせてはいないだろうか。
 心配になって問いかけると、頭を振った彼がほんの少し腰を浮かした。
「あっ、あ……」
 浮かせたとき以上の慎重さで腰をゆっくりと落とす。大腿を震わせながらのたどたどしい動きではあるけれど、視覚的な刺激も相俟って眩暈がしそうだ。
「ど、しよ……きもち、い」
 うわ言のように呟かれた言葉は、コンラッドに伝えるためではなかったのかもしれない。けれど、コンラッドを煽るには十分で。
「や……あっ、あっ」
 上体を起こしたコンラッドは、細い身体を強く抱きしめて震える唇へと噛み付くようにキスをした。


「んっ……」
 ぎゅっと握られた拳が弱く胸を押すものだから、コンラッドは深く触れ合わせていた口付けを解いた。
 どうしたのかと覗き込もうとした恋人の顔は、逃げるように肩口に埋められてしまった。
「ユーリ?」
 はふ、と肩に掛かる吐息が熱い。胸元に触れた彼の手も。
 少しがっつきすぎてしまっただろうか。慰めるように背を手のひらで撫でると、細い体が膝の上で身じろいだ。
 ぴたりと触れ合っていた胸の間に生まれた距離を埋めるように抱きしめようとすれば、またやんわりと胸を押されしまう。
 どうしたのかとコンラッドが問いかけると、ユーリは顔を上げないままコンラッドの胸へと触れていた手をゆっくりとわき腹から腰へ滑らせた。
「……さわって、いい?」
 躊躇いがちに指先が撫でたのは、下着の上。
 てっきり手加減を望まれるのだとばかり思っていたのに。恋人の予想外の行動で言葉をなくしたコンラッドに気づいてかいなくてか、ユーリはそっと膨らみを撫で、肩口に熱の篭った吐息を零した。
「ユーリ……っ」
「おっきい」
 たどたどしい指さえも煽られるのは、相手が恋人だからだ。手のひらで揉みこむ動きに、息が詰まった。
 コンラッドが苦しげに息を吐くほどに、ユーリの指がどんどんと大胆になっていく。


 あまり肉のついていない胸を撫でられると、それだけでびくりと肩が強張った。
「ぁ……っ」
 大きな手のひらや長い指に残る小さな傷や胼胝が、滑らかな肌を刺激する。
 その間にも、そちらばかりに集中することを許してくれない恋人の唇に首筋をやわらかく吸い上げられて、ユーリは甘さを含んだ吐息を零した。
「ぁ、あ……ン、っ」
 お願いをしたわけではないけれど、彼は最初から痕を残すということをしなかった。
 ごくごく優しく肌に与えられる刺激はくすぐったくて、すこしだけもどかしい。
 繰り返し与えられる刺激によってだんだんと肌が上気するのを感じて、ユーリは恋人の腕の中で逃れるように身を捩った。
「ん、ぁ……やっ、コンラッ、ド……」
 自由に身体を動かすことを許されたのは、恋人に背を向けるまでだった。
 背中に触れた恋人の胸から鼓動を感じる。ぴたりと覆いかぶさる形で拘束された身体は、これ以上逃れることを許してはもらえなかった。
 胸を揉みしだいていた大きな手のひらが、薄い腹筋の割れ目をたどるように優しく肌を撫でていく。あちらこちらへ寄り道をしてはユーリの息を乱れさせたそれは、たっぷり時間をかけた後でようやく閉じられた脚の間へとたどり着いた。
「や……っ」
 控えめに頭を擡げるそれの形を確かめるように大きな手が包み込む。柔らかく揉まれると、伏せられた睫が小さく震えた。
 ユーリが小さく声を上げる度に、恋人の手は大胆さを増していく。煽られるままに容量を増した熱が濡れ始めるのに、そう時間がかからなかった。
「気持ち、いい?」
 耳元で尋ねる声は、低く、あまい。
 もうすっかり彼の手の中で張り詰めたそれが、聞かなくたって状況を伝えているはずなのに。羞恥心を煽るいじわるな問いに目許が朱に染まる。
「ぁ……い、い・・・」
 それでも答えてしまうのは、そうすればもっと気持ちよくしてもらえることを教えられてしまったからだ。
 よくできました、と褒めるように恋人の唇が耳を食み、舌先が耳の中をくすぐった。くちゅり、と間近で聞こえた音がユーリの頭の中で大きく響いて、たまらずに身を捩ろうとした身体はたくましい腕に阻まれた。
「ぁ、あ、あ……」
 くちゅり、くちゅりと頭の中でいやらしい音が響く。
 もうだめ……と嬌声まじりに零したユーリは、恋人の腕の中で震え、胸に押し付けるようにその背を仰け反らせた。


(2015.06.29)