小ネタ39
「くるしい?」
さっきまで呼吸のし方までわからなくなるぐらい苦しかったのに。
覗きこんでくる顔が、あんまり苦しそうだから、おれは逆に小さくわらった。
身体中があつくて、うまく酸素がまわらない頭がいたくて、胸がくるしくて、ちょっとでも動いたら身体が引き裂かれるんじゃないかってぐらいこわいのに。
「だい、じょうぶ」
おれの口から出るのは、考えているのとまったく別のことだった。
お互いに身動きがとれないまま、じっとりと滲んだ汗が肌を濡らしていく。呼吸はどちらも荒く、一向におさまる気配がない。
「ですが、やっぱり」
「コンラ、ッド」
まだためらう彼が、何を言いたいのかは分かっているから、言わせる前に遮った。
おれの上から引こうとする彼の身体を、捕まえた。首に腕を絡めて、離されまいとしがみつく。
急に動いたせいか受け入れたままの彼が中を擦って、どちらともなく声が漏れた。
「うれしい、から」
もっと近くにいきたくて、たくましい腰に脚を絡めた。抱きしめた一回り大きな身体がびくりと跳ねる。
銀の星の中で揺れる葛藤は、ぜんぶおれのためだと知っているから、こわくない。
痛くたっていい。苦しくたっていい。
「ぜんぶ、あんたが欲しいんだ……ンッ」
おれのぜんぶをあげてもいいから、この人が欲しいと思ったんだ。
おれの必死に訴えに、彼は参りましたと熱っぽい息を吐き出してから、おれの身体を痛いぐらいに抱きしめた。
体格差があるとはいえ、さすがに膝の上に乗るというのは抵抗がある……はずだったのだけれど。
「んっ、ぁ、あ……」
向かい合うようにして座らされ、逃げる間もなくキスをされたら、それだけで頭が真っ白になった。
舌を擦りつけあうキスがきもちいい。
くちゅ、とお互いの間でするいやらしい音が、体温をあげていくのを感じながら、気づけばコンラッドのくれるキスに夢中になっていた。
「かわいい」
キスが終わる頃には、少し腫れぼったくなったように感じる唇を指の腹で撫でられた。
なにが楽しいのかコンラッドは目を細めて口許を緩めながら、おれの身体に触れてくる。
薄い肉を寄せるように両側から揉まれたかと思えば、少し屈んでおれの胸元に顔を埋めた。
「んっ……やっ」
色づいたそこをまるごと唇で食まれて、身体が震える。
宥めるようにあちこち撫でられても煽る結果にしかならなくて、おれはコンラッドの髪を抱きしめるようにしてかき混ぜた。
小さなそこを舌先で擽られて、ちゅ、とキスするみたいに啄ばまれると、漏れる声が止まらない。
同時に、脚の間がむずむずしてくるものだから、恥ずかしさもわすれて腰を揺らした。
「きもちいい?」
「うん」
恥ずかしい質問にも、素直にうなずく。
いやらしいことをしている時に、きもちよくなるのは悪いことではないのだと、根気よく教えてくれたのはコンラッドだった。
やはり恥ずかしくはあるけれど、それ以上に彼のうれしそうな表情が、おれを素直にさせてしまう。
「さわ、って」
「触ってるよ」
空いた手が、唇に含まれていないほうの胸の先を指先で押しつぶしてから、きゅっと摘んだ。
「ンッ、ぁ、あ」
切れ切れに喘ぎながら、そっちじゃないと頭を振る。キスして、胸に触れられただけですっかり熱を持った下腹部が、互いの腹の間で震えていた。
求めれば、欲しいだけ与えられるのを知っている。
「コン、ラッド……ね、さわ、って……ぁ、あ」
大きな手で触れて欲しい。たくさん撫で回されて、気持ちよくなりたい。
切ない声でねだれば、望んだとおりに与えられるそれに、おれはどろどろに溶かされながら何度も彼の名を呼び、すき、と繰り返した。
(2015.11.16)