小ネタ43
指先でそっと頬に触れると、見詰め合った先の銀の星が輝く虹彩がやわらかく煌いた。
初めては恥ずかしいばかりだったコンラッドの膝の上が好きになったのは、まっすぐに向き合える位置に彼の顔があると気づいてからだ。
「積極的ですね」
手を伸ばして頬に触れる。てのひらよりも低い体温は心地よくて、両手で包み込んでそっと引き寄せた。
「ん」
普段のおれと彼の間にある頭ひとつ分というのは大きすぎる差で、手を伸ばして引き寄せたって唇がうまく届かない。
腰を折ったコンラッドと首が痛くなるぐらいに上向いてするキスも悪くないけれどどうやったって主導権を奪われがちだから、つい積極的に彼の膝に乗ってしまうのだ。
引き寄せて、啄ばむみたいに唇を触れ合わせる。軽い接触を繰り返すうちにコンラッドの唇が薄く開かれるから、誘われるままにそっと舌を差し入れた。
「ふ……んっ、ン」
口の中の少しだけ高い体温を感じながら、自分のものじゃない舌へと舌先で触れて、表面を舐める。
自発的にあれこれするのはちょっと楽しい。
あっという間に乱される呼吸も今日はまだ少し余裕があって、いつも自分がされるように敏感な上あごの裏をくすぐりながら考えるのは、どうやってこの涼しげな表情を崩してやろうかということだ。
目を開けたまま反応を覗うおれを見つめ返してくる瞳は楽しそうで、まだまだ余裕を感じるのがひどくくやしい。
「……ん、ぁ」
なかばムキになってキスを続けながら、跨いだ腰を揺らしてみせれば、片目がちょっと眇められた。
「きもち、いい?」
「ええ」
まだ笑み交じりの余裕を見せられながらも、キスの合間に漏れる吐息が熱い。
擦り合わせたそこが、次第に熱を帯びて張り詰めていくのがわかる。自分だけじゃないのを感じればいっそう腰の動きが大胆になったけれど、高ぶれば高ぶるほどにもどかしくも感じて、腹の間へと手を伸ばした。
「ぁ、あ……っ」
そうっと包み込んだ二つの熱が両手の中でびくんと跳ねた。そのまま上下に動かせば指先が濡れて、たどたどしい動きを次第にスムーズなものへと変えていく。
「ぁ、コン、ラッ……ぁ、あっ、あ」
敏感な先端を擦りあげれば、背中が撓る。
バランスを崩しそうな腰を支えてくれたのはたくましい腕で、耳元で「続けて」と囁かれてしまえば、余裕だとか主導権だとかさっきまで考えていたあれこれはもうどこか遠いところへ吹き飛んで、ただ夢中になって続けることしかできなかった。
(2016.05.07)