小ネタ45
「……ンッ」
なめらかな肌に手を這わせると、後ろから抱き込んだ腕の中の恋人が小さく息を詰めた。
かすかな緊張をはらんで強張った身体を宥めるように撫でるけれど、さっきから彼は小さく震えるばかりだ。
「かわいい」
胸の先を二つの指で摘んで、朱色に染まった耳元に唇を寄せてみる。
低く囁く声が甘くなるのはわざとではなくて、相手が彼だからだ。幾度となく触れても物慣れない様子がかわいくて、いとおしい。
「耳……ッ、や、だ」
「どうして?」
「やらし、から……っ、ぁ」
やわらかな耳たぶを唇で食んで、体温の低いそこを舌先でくすぐる。ビクッとことさら大きく震えた大腿を撫でた後、素直な反応を見せる脚の間に手を這わせれば、どうしてか恋人が逃げるように身じろいだ。
「あ、や、やだっ」
逃がさぬように抱きしめながら、ゆるく勃ち上がった中心を握りこむ。敏感なそこをやさしく撫でたコンラッドは、腕を叩かれてゆっくりと瞬いた。
「嫌でした?」
後ろから恋人の顔を覗きこむ。朱色に染まった目許に唇を寄せて、やめておくかと問いかけると、そうではないと首を横に振られた。
「ヤじゃないけど……」
腕の中で尚も身じろぐ恋人のために腕の力を緩めると、そのまま抜け出てしまうのかと思った彼がコンラッドへと向き直った。
「ユーリ?」
少し怒ったように眉根を寄せた顔を前にしてさえ、かわいいなと場違いなことを考えてしまう。どんな彼も特別で、かわいくて、いつだって求めてしまう。だから、彼の怒りももっともだなと反省をしかけたコンラッドは、おもむろに抱きしめられて目を瞠った。
「おればっかりなのが、いやだ。おれも、あんたに触れたい」
肩口に顔を埋められ、やわらかな髪が頬をくすぐる。近づいた分だけ強くなる恋人のにおいにくらくらした。
(2016.10.12)