病気の看病 - 来瞳瑠夷様


風邪を引くと甘えん坊になる。とはよく言ったものだ。とコンラートは思った。

今朝、有利に熱があるのが発覚し、今有利はベッドで眠っている。
コンラートはそんな有利に付きっきりで看病している。元々コンラートは有利の護衛のため、支障はない。
熱が発覚してから寝かし付けた自分に、有利は「あんたが看病してくれんの?」と聞き、今に至る。のだが…

「ユーリ。早く治って下さい。でないと、これでは生殺しです」
愛しい者が頬を染め、潤んだ瞳で荒い息を吐いていれば理性が危うくなるのは当然のこと。
風邪だと分かってから、自覚の生まれた有利はしんどいが故に上記の状態になったわけだが、それを傍で看病するコンラートは理性を保つのにとてつもない労力を要した。
かと言って、熱のために辛そうな有利を見れば感情のままに襲うことも出来ず、コンラートは必死で平静を保っていた。

「ん…」
窓の外の陽が傾き始めた頃、有利は目を覚ました。
「お目覚めですか。気分はどうですか、ユーリ?」
「ん〜大分マシんなったかも…」
「失礼します」
コンラートはそう言って有利の額に手をあてた。
「まだ少しありますね。でも大分下がりましたね」
「うん。起きられるくらいにはなったし」
「あ、駄目ですよ。まだ寝ていて下さい」
「え〜」
そう言って体を起こそうとした有利を慌ててコンラートが止めた。不満そうに口を尖らす有利に、コンラートの中の収まっていた熱が蘇る。と同時に、悪戯心が芽生えた。
「ユーリ。汗をかけば熱はすぐ下がりますよ」
「?汗って、運動なんか出来っこないじゃん」
「簡単な方法がありますよ^ ^」
「……ιいや、いい、大人しく寝る!」
何やらコンラートから感じる不穏な気配を感じ取った有利は、すぐさま掛布を被ってベッドに潜り…込もうとしたが、寸前で腕を掴まれ出来なかった。
「あ〜コンラッドさん?」
「はい?」
「腕離してもらえませんか?」
「ユーリ、早く熱下げたくないの?」
「いや、大人しく寝たら下がると思うし!」
コンラートから発せられる怪しい気配に有利はとっとと眠らなかった自身を呪った。
冷や汗を流して、一向に目を合わそうとしない有利に、コンラートはクスクスと笑った。
「本当に、ユーリは可愛いね」
「ムッ…男に可愛い言うな」
コンラートは、自分の言葉にむくれた有利に少し困ったように微笑んだ。
「そういうのが可愛いんだけど、自覚無いね」
「だから可愛いって「黙って…」……っ!」
コンラートは更に言い募ろうとした有利の唇を、自らのそれで塞いだ。
「ん…っ、こんらっ……んぅ…っ」
突然のことに抵抗した有利も、舌を絡め取られ次第に深くなる口吻けに力が抜けた。
「っ…はぁ…、風邪…移る…て…」
「あなたの風邪なら本望です」
長い口吻けから解放された有利が途切れ途切れに言うと、そんなことを返された。
「…//っ、相変わらず、恥ずかしいことさらっと言うよな!」
有利はニコニコと恥ずかしげもなく言う目の前の男を、心底殴り飛ばしたくなった。
ぷいっと顔を背け、視線だけでコンラートを盗み見た有利は、銀の虹彩の奥に熱を見つけドキリとした。
「今はこれ以上はしません。ですが、本当にもう限界ギリギリなんです。一刻も早く治して下さいね」

「な…っ///」
コンラートの爆弾発言に有利の顔が真っ赤になった。
「な、治ったら…どうすんの?」
「それはもちろん…」
まだ頬に赤みを残したままの有利の言葉に、コンラートは綺麗に微笑み、有利の耳元で囁いた。
「我慢した分の俺の相手、してもらうよ?」
「///……っ!?コ、コンラッド!?」
顔を離す間際にさりげなく有利の耳を舐める悪戯付きで。
「このまま眠って下さい。明日には下がっていると思いますので」
「うん…//」
有利は耳を押さえ、赤い顔のまま大人しく横になった。
「おやすみなさい。ユーリ」
「…おやすみ//」
最後に横になった有利の頬に触れるだけの口吻けを落とした。



部屋を出る直前、コンラートはベッドに眠る有利を振り返った。
「ゆっくり眠って下さい。おそらく明日は眠れませんから…」


(2010.02.01)





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