- 第3.6話
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「ほら、コンラッド」
「毎年ありがとうございます」
「いや、おれからじゃねーよ。お袋からだし」
「知ってますけど、毎年届けに来てくれるのはユーリでしょう?」
「そうだけどさ」
「これが毎年の楽しみなんです」
「お袋からのチョコが? コンラッド、去年もガッコでたくさん貰ってたのに」
「今年は全部、お断りしてます」
「もったいねーな。おれなんて、お袋からしかもらえないのに」
「だって、ユーリ。貰ってきても一緒に食べてくれないでしょう?」
「当たり前だろ。女の子たちがコンラッドにって用意したものなんだから、おれが食べたらバチがあたるぜ」
「だから、いらないんです」
「甘いもの嫌いだっけ?」
「いえ、そうじゃなくて…あ、そうだ、ユーリ」
「なに?」
「これ、どうぞ」
「チョコ? なにこれ、ツェリさまから?」
「おれからです」
「え、なんかデパートに売ってそうな感じなんだけど」
「はい。買ってきました。バレンタイン一色な感じで見ていて楽しかったですよ」
「おれには絶対に行けそうにない場所だな」
「母上の付き添いだと思われて、色々味見させてもらえましたよ。あ、もちろん自分用の買い物だって訂正しておきました」
「あっそ…」
「おれ、なにも用意してないぞ」
「構いませんよ」
「あ、貰ったばっかりだけど一緒に食べる?」
「いいですね。一ついただけますか?」
「なんで口あけてるんだよ」
「昔はよく食べさせてくれたじゃないですか。ね?」
「……ほら」
「ありがとうございます」
「ユーリも食べさせてあげましょうか?」
「いらねぇよ!」
(2010.02.14〜2010.03.13 WebClap)