4.Wedding Night


 色違いのおそろいのパジャマで、二人でベッドに入って。
 じゃれあうようにキスをした。
 触れ合うだけのキスは、結婚する前から何度もしてる。
「ユーリ」
 キスの合間に名前を呼ばれて、目を開けたら見たことのない表情のコンラッドがいた。
「愛してます」
 低い声の囁きは、それだけで身体が火照る。
 同じように言えたら良いんだけど、俺にはちょっとハードルが高い。
「俺も、好きだよ」
 だから精一杯の気持ちで、好きだと返して、また唇を触れ合わせた。





 ゆっくりとパジャマも下着も脱がされた。
 初夜だし、と風呂場で念入りに洗ってみたけど、恥ずかしい。
 俺を脱がせた後で、自分のパジャマを脱ぐコンラッドの姿が、ベッドライトの淡い光の中で浮き上がる。
「キレイだな」
 広い肩幅とか、程よくついた筋肉とか、素直な感想を漏らしたら、コンラッドが肩を揺らした。
「あなたのほうが綺麗ですよ」
「…っ」
 恥ずかしいヤツ。
 お世辞だとは思うけど、あんまりにも笑顔で言うから、何も言えなくなった。
 脱ぎ終えたコンラッドが、俺にのしかかってくる。体重をかけないようにと気を遣ってくれてる中でも感じる重みが、嬉しい。
 素肌を触れ合わせながら、キスをした。
「唇、開いて」
 言われるままに、薄く開いた唇から無遠慮な舌が潜り込む。
「ん…っ、ふ…」
 舌先が触れ合う。逃げようとしたら、絡まれた。擽られて吸われて。
 ただ唇を触れ合わせる以外のキスは初めてだ。
 すがるように首へと腕を絡めて、恐る恐る自分からも動きを真似ようとしたら、自然とさらに深いものになった。
「かわいいですね」
 唇が離れたと思ったら、口端を舐められた。
 普段ならば「かわいい」など言おうものなら即抗議なんだけど、なんか今日は力が入らない。
 キスだけでもうノックアウト状態な俺にお構い無しに、コンラッドの唇があちこちに移動する。
 耳の後ろに、チリッとした痛み。
「…ぁ、なに…?」
「俺のだっていう、徴をね」
「耳元、で、しゃべるな…っ」
 抗議したら、耳たぶを舐められた。
 気持ちいいけど、舐める水音が頭に響く。
「ぁ、あ……」
 首筋に鎖骨に、舌先が辿った箇所が空気に触れてひんやりとした。
 節くれだった大きな手が、ゆるゆると腰を撫でる。抱きしめる時とは違う意志を持った動きに、身体が強張った。
 首へとしがみ付く腕に力が篭る。そんな俺の腕をコンラッドははずさせて、二の腕にキスをした。先ほどの耳元にされたのと同じ僅かな痛みを感じてそちらを見る。
 唇が離れた後に、紅い徴を見つけた。
「ユーリ」
「…ぁ…、だ、め…」
 今度は胸にキス。
 突起を舌先で舐められると、そこが張り詰めるのが自分でも分かった。
 同時に下肢も疼いて、無意識に腰が引けてくる。
「気持ちいい、ですか?」
「ぁ…ん、…い…い……っ」
 腰を撫でていた手が、大腿に触れた。柔らかい肉の感触を楽しむように、そこを撫でる。
「コンラ…ド…、…っあ…」
 そこじゃないところを触って欲しい。
 口に出せない希望が伝わってか、ようやくコンラッドが俺の熱へと触れた。
 ピクンっと腰が跳ねて、さらに熱くなる。
「ぁ…あ…」
 先端から溢れ出るぬめりを、コンラッドの指が広げていく。
 自分で触れることもほとんどなかった場所。慣れない刺激に、あっけなく限界が近づいて、俺は必死に首を振った。
「だ…め…、やっ…出ちゃう、から…」
「いいよ、ユーリ。イッて…」
 胸の飾りを口に含んだまま喋るコンラッドの歯が当たる。
 コンラッドの大きな手は相変わらず俺を追い詰めるように、どんどんと動きを早くする。
「ぁ…あ…、ぁああっ……」
 散々に煽られて、俺は勢い良く自身を解放した。

「すみません、ユーリ」
 謝られて、なんのことだか分からなかった。
 達した直後の脱力感の中、力の抜けた四肢をベッドに投げ出していただけ。
 両足の膝裏を持ち上げられたと思うと、大きく脚を開かされた。
「え、なに…やっ…」
 コンラッドの顔の前に下肢を晒している。自分の格好に軽くパニック。
 逃げようにも脚を掴まれて叶わず。先ほどまで触れられていた場所のさらに奥、双丘の間へとコンラッドの顔が寄せられていくのを見ていられずに、俺は目を閉じた。
「ぁ…や…」
 舌先が擽る。
「きたな…か、らっ…」
「そんなことないですよ。さぁ、力を抜いて」
「できな…やっ…」
 容赦なく舌先が閉じられた場所をこじ開けようとする。唾液を送り込むようにして。
「あなたを、俺にください」
「っ…」
 声があまりに切なげで、俺は大きく息を吐いた。
「いい、よ…」
 さっき出した俺ので濡れた指が、ツプリと差し込まれる。
 異物感と圧迫感を、歯を食いしばって耐える。
 確かめるような動きで何度も抜き差しされた後で、圧迫感が増した。
 奥へ奥へと指が動いてるのが、自分でも分かる。
「あっ…」
 気持ち悪いだけだった動きが、一箇所を掠める時だけ違う感覚に変わった。
「きもちいい?」
「あ…へん…、そこ、やっ…」
 指がさらに増えて、苦しいのに。でも、気持ちいい。
 触れられていないのに、また俺の脚の間で欲望が頭を擡げる。
 コンラッドの指が動くたびに、ゾクゾクと肌が粟立った。
「や…だめ、また…ぁん」
「イっていいですよ」
 自身が温かなものに包まれた。
 コンラッドの口だと理解するより先に、強く吸い上げられて俺は二度目の精を吐き出していた。
「…あぁっ…、……ふ……」
 ぐったり。
「ユーリ、ごめんね」
 後ろを犯していた指が抜けて、ようやく息を吐いたところで、コンラッドにまた謝られた。
「なに…が…?」
 謝られることなんてなにもないのに。
 ぼんやりと見上げたコンラッドの表情は、熱っぽくて、苦しそうで。
 両腕を伸ばしたら抱きつかせてくれた。
 大きく開かされたままの大腿に感じるのはコンラッドの熱。
「だいじょ、ぶ…だから」
 痛みを覚悟して、俺は強く目を閉じた。
「…ぁ…あ…っ、…ぅ……」
 ゆっくりと押し入ってくる。
 気を遣って時間をかけてくれるのが、ありがたいけれど辛い。
 閉じたままの目元から涙が溢れた。
「ユーリ、息をして。力、抜いて…」
「ぁ…や、ぁ…」
 縋るように立てた爪がコンラッドの背中を傷つけた。
「全部、入り…ました…」
 俺の様子を伺いながら、コンラッドが腰を軽く揺らす。
 反射的に腰が震えた。
「ユーリ、痛くないですか?」
「へ…き、だ…」
 痛みはない。
 ただの圧迫感。
 恐る恐る目を開けたら、目の前に綺麗な瞳を見つけて、少しだけ落ち着いた。
「ぁ…好き……」
 キスを強請る。唇を触れ合わせるための僅かな動きでも、じんわりと腰が熱くなった。
「愛してます」
 望むままにキスを何度もくれながら、コンラッドが腰を動かした。
「ぁ…はぁ……、んっ…、あ…」
 奥を突かれる度に、前をいじられた時とは違う甘さが身体を苛む。
「ぁ…コン…っ、ぁ…あ…」
 また欲望が張り詰めた欲望が、コンラッドの腹に擦れ、蜜を零す。
「あっ、…んっ…も…や……」
「俺も、イきそう、です…っ」
 限界を訴えて首を振ると、耳元で掠れた声がした。
 もう口からは悲鳴まじりの嬌声しか出なくて、ただ揺さぶられるままになりながらコンラッドにしがみつく。
「…あ、あっ…あぁあ!」
「…っ」
 深く深く突き上げられて、三度目の吐精と同時に、注ぎ込まれる熱を感じた。





「っ…はぁ……」
 身体に力が入らない。
 繋がりを解いて離れていくコンラッドの熱が寂しかったのは一瞬だけで、すぐにまた抱きしめられた。
「ユーリ、愛してます」
 何度目か分からない愛の囁きが耳に心地良い。
「俺も、……る」
 アイシテル。
 ぼんやりと意識の中呟いた声は掠れていて。
 ちゃんと聞こえたか気になったけれど、確かめる前にそのまま意識が途切れた。


2009.09.01
祝・初えっち!
ユーリ以上に管理人が疲弊したので、しばらくは再びぬるいお話に戻ると思います。。。