5.Kiss
コンラッドはキスが好きだ。
朝の挨拶だとか、行ってきますの挨拶だとか、何かと理由をつけては…いや、理由がなくてもキスをする。
触れ合うだけの軽いものだったり、夜を思い出させるような深いものだったり。
あ、まただ。
「ユーリ」
甘さを含んだ優しい声で俺の名前を呼びながら、顔を近づけてくる。
声だけじゃなく、表情も優しい。
恥ずかしいけれど嬉しいから、俺はいつも顔を上向けたままで目を閉じる。
頬に添えられた手で顔を固定されて、いつもならばすぐに柔らかな感触を感じるのに、今日はいつまで経ってもそれが来ない。
「……ん?」
なんだ?
恐る恐る目を開けたら、じっと俺を見下ろしているコンラッドと目が合った。
「なに?」
なにか顔についてる?
「いや…、かわいいなと思って」
「ちょっ…!」
かーっと顔が火照る。逃げようとしたけれど、両頬に添えられた手がそれを許さない。
「俺にキスして欲しいって言ってますよね」
「言ってねぇって、……ん」
否定するけれど、やはり顔を近づけられると反射的に目を閉じてしまう。
また。
予想した感触がなくて目を開けたら、先ほどよりも近い距離にコンラッドの顔を見つけてドキリとした。
「ほら、言ってる。キスしてって」
「至近距離で喋るな」
キスまで数センチ。
息がかかる距離でコンラッドが喋る。
遊ばれている。
居心地が悪くて、唇を尖らせたら機嫌をとるようにやっと唇が触れ合った。
「もっと欲しい?」
「いらない」
「嘘つき」
俺の返事などお構いなしに、今度は啄ばむようなキス。
何度も何度も。
怒っているんだぞ、という態度を保ち続けられずに、俺は諦めてコンラッドの首に腕を回した。
触れ合う度に、好き、って言われてる気がするんだから、仕方ないよな。
2009.09.04
バカップルばんざい!